許嫁な二人
(17)
唯が碓氷神社にもどって、2ヶ月が過ぎた。
心配していたこともなく、透は唯のあとを追ってはこなかった。
これで良かったんだと唯は自分に何度も言い聞かせる。
そんなある日、東京でお世話になった誉と千賀子が
碓氷神社にやってきた。
着くなり、あいさつもそこそこに、父と三人で何事か話し合っている
様子に唯の心はおちつかなかった。
無理を言って、東京から急にこっちに戻ったことが、
いけなかったのだろうか。
呼ばれていると母に言われて客間にむかった唯は緊張で強張った顔の
ままあいさつをし、顔をあげた。
父と誉と千賀子が座につきこちらをみている。
「勝手を言ってこちらに戻ってしまったこと、本当にすみません。」
唯は頭をさげた。
「そのことは、もういいのよ。」
とやさしい千賀子の声がして、唯はやっとほっと息をはいた。
「今日は碓氷神社のことで話があってきたんだ。」
誉の言葉に唯は首をかしげた。
「碓氷神社を息子の隆信にまかせてもらえないかと思ってね。
あと1年で大学を卒業し、神職資格もとれるし、ここで修行させて
もらって、そのまま奉職させてもらえないかと思っている。」