許嫁な二人
(3)
春、桜の下と書くここ桜下市は、どこもかしこも桜の花の
薄紅色で溢れかえる。
ここ桜下第二中学校も満開の桜が校庭を賑わし、ときおり
吹く風が、花吹雪のカーテンをつくっている。
そんな景色をひじをついて眺めていた唯は、ぽんと後ろから
肩をたたかれて振り返った。
そこには丸い顔に人懐っこい笑みを浮かべた良世がたっていた。
「もうその紙、書いちゃった?」
そう良世に問われて、唯は手元の紙を見つめる。
「ううん、まだ。」
「やっぱり帰宅部?部活は唯ちゃんの体力じゃ難しいか、、。」
そう言いながら、良世は唯のひとつ前の席に座った。