許嫁な二人
 
 ぼーっと考えごとをしていたら、先に部活動の申し込み書
 を書き終えた良世が、トントンと机をたたいた。



   「あっ、ごめん、今書くね。」



 良世とはクラスがひとつずれてしまったけれど、こうして
 時々逢いにきてくれる。

 快活な良世は、クラスで新しい友達を見つけたようだけど
 昔から引っ込み思案な唯は、まだ仲良くなった友達はいない。

 そのことを良世は、姉のように心配してくれる。

 そんな良世に見守られながら、唯は申込書の一番上の欄に
 弓道部と書いた。



   「弓道って、、ちょっと唯ちゃん、それ運動部じゃん
    だいじょうぶなの?」

   「うん、弓道は小学生の頃からやってたの。」

   「でも、ここの弓道部、強いんだよ、練習も半端
    じゃないって。」

   「わかってる。」

   「わかってるってさぁー」



 そう言って顔をしかめる良世に唯は笑ってみせた。



   
< 20 / 164 >

この作品をシェア

pagetop