許嫁な二人

   「部活に入ろうと思えたのは、先輩が後押し
    してくださったおかげです。」

   「うん、僕も唯ちゃんには入ってほしかったしね。
    ただし、無理はしないこと、大事な碓氷のお姫様を
    お預かりするわけだしね。」



 碓氷の姫といわれて、ぴりっとした痛みが唯の胸をさした。

 上条の家も代々碓氷家に仕えた家柄らしく、上条は時々
 唯をからかって、”姫” と呼ぶ。



   「練習が始まったな、僕ももう行かないと、
    本当に弓を引いていかないの?」

   「はい、1年生は来週からですよね。」

   「まあそうだけど、気の早い奴はもうまじって引いてるよ。
    ほら、出てきた。右から2番目の的へ構えてるやつ。」



 そう言われて、唯は上条が指差した方を眺めた。

 

 途端に、心臓がとくんと変な調子に跳ねる。



 弦をひきしぼる弓がけの向こうに見える顔は、、、


  (透くん、、、)


 なぜ、彼がここにいるのだろう?

 城元小学校にも弓道クラブがあったが、彼はそこに
 入ってはいなかった。


  (サッカークラブに入っていたし、そこで活躍も
   してたから、絶対サッカー部に入ると思ってたのに)


 桜下第二中学校は、サッカー部も良い成績をだしている
 強い部のはずだ。

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