許嫁な二人
(4)
「はぁー。」
週明けの学校へ行くバスを待ちながら、唯はもう何度目に
なるかわからないため息をついた。
今日から部活動がはじまる。
あれから入部届けを撤回する方法をいろいろ考えたけれど
決心がつかない。
一度出したものを取り消すには、それなりの理由が必要だ。
やはり体力的に無理だと言えばよいのかもしれないが、
心をくだいてくれた上条のことを思うと、なかなか
言い出せなかった。
それに良世にもあんなエラそうなことを言ったのだ。
せめて一日延ばしにしたくて、学校を休もうかと思ったが
そんなときに限って熱など出やしない。
唯は自分の体が恨めしくなった。
重いため息をまとわりつかせたまま学校に行き、放課後になり
唯は足取り重く、弓道場に向かった。
(私が弓道部に入ったのを知ったら、透くんはなんて
思うんだろう)
呆れるだろう、、、良世が言ったように、体力が続くはずがない
と思うにちがいないと唯は思った。
呆れられても、憐れまれても、そう言う表情が透の顔に浮かぶのを
見るのはいやだ。
しかし、ひょっとしたら、、6年生のあの頃のように、透は唯の
ことを無視するかもしれない。
それはそれで悲しいが、あの頃もやり過ごせたのだからきっと
今度もできる。
放課後の短い時間の内だけなのだから、、、、
そう必死で自分に言聞かせて、唯は弓道場の入り口をくぐった。