許嫁な二人
ぐるりと2、3年生に半円に取り囲まれた中を
1年生が順番に自己紹介をしていく。
「桜下小学校から来ました、畠中です。
弓道歴は1年です。」
「城道小学校からきました、村井です。
弓道は初心者です。」
2、3年生は弓道着を身につけているが、1年生はみな
学校のジャージ姿だ。
それぞれ出身校や弓道歴を言い、頭を下げていく。
2、3年生にくらべると、みな小粒なのが、かわいらしい。
「城元小学校から来ました、瀬戸です。
弓道歴は2年です。」
唯の耳に、透の自己紹介の声が聞こえてきて、はっとする。
(弓道歴が2年なんて、全然知らなかった。でも、そういえば
透くんの家には弓道場があったな)
自己紹介をする前、1年生だけが呼び集められたときも、
透は唯を見なかった。
呆れられることも、憐れみの表情も見ないですんだが、
頑に唯のことを遠ざける透の気持ちに再びふれて
唯は、自分の心がかたく冷えていくように感じた。