許嫁な二人

 バスを見て口をとじた良世に、唯は心の中でほっと
 息をはく。



   「ごめんね、良世ちゃん、バスきたから行くね。」

   「うん、またね。」

   「バイバイ。」



 逃げるようにタラップを踏んでバスの中に入ると、
 唯はバスの窓から、良世を伺うように見る。

 良世はなんとも中途半端な手のあげ方で、バイバイをしていた。

 いつも笑顔の良世の顔も、なんだかとても中途半端な表情
 をしているように見えて、唯は静かに目をふせた。
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