許嫁な二人

 夕食の食卓には、祖父の巌と母が座っていた。

 透が食卓につくと、先に晩酌をはじめていた巌が話しかけてきた。



   「どうだ、中学の弓道は?」

   「やっぱりレベル高いよ。」

   「そうか、練習にはげめよ。」

   「わかってる。」



 中学に入って弓道部に入ったのは、この祖父が原因だ。

 修学旅行から帰って、頑として唯を迎えにいくことを拒んだ
 透に巌は言った。



   「わかった、その代わり弓道に励め、中学では弓道部
    に入るんだぞ。」



 唯を迎えにいかない事との、交換条件だった。






 修学旅行から帰って、透は唯を迎えにいかなくなった、
 というか、行けなくなった。

 平気そうな態度をとっていたものの、囁かれる ”いいなずけ”
 という言葉に動揺し、いら立ちが募る。

 それまでだって、一緒に登下校することをからかわれたことだって
 あったのに、何故か、 ”いいなずけ” という言葉に透はうろたえた。

 面と向かって抗議することも、笑い飛ばすこともできずに
 透はすべてを無視し続けた。
 
 唯のことも一緒に。

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