許嫁な二人
でも、話をするチャンスかもしれない。
無視されても仕方がないと唯は思っていたが、
普通に会話できればそれに越した事はない。
さんざん躊躇って、それでもなんとか勇気を振り絞って
「あ、あの、、、。」
と声をかけたところで、別の方向から声がした。
「やあ、早いんだな。」
見ると、同じ学校のジャージに身を包んだ1年生の男子が
立っている。
その彼は、つかつかと唯の方へ歩いてくると、さっと手を
差し出した。
「俺、諸井大輔、よろしく。」
突然のことで唯は戸惑ったが、差し出された手を無視する訳にも
いかず、そっと自分も手を差し出した。
「碓氷 唯です。」
勢いよく唯の手をとった諸井は、それをぶんぶん振りながら
「知ってる、碓氷の姫だろ。」
と言った。