許嫁な二人
これから透は、幼馴染みを迎えにいって、そうして
学校にむかう。
祖父に言いつけられている事とは、幼馴染みを迎えにいくこと
だった。
膨れっ面を隠そうともせず、もくもくと足を運んで、碓氷神社の
鳥居のところまでくると、女の子が一人、透とは反対の方向に顔を
向けて、立っているのが見えた。
肩のところで切りそろえたまっすぐな髪が、朝日をうけて艶めいて
見える。
じっと透が見ていたら、突然女の子はこちらを向いた。
透をみとめたその顔に、ふんわりと笑顔がひろがる。
笑顔をむけられて、不機嫌な顔をしている自分のことが恥ずかしく
なったが、今さらにっこりするわけにもいかず、透は仏頂面のまま
足早に鳥居のところまで歩いていくと
「悪い、唯。遅くなった。」
と声をかけた。
唯と呼びかけられた少女は、笑顔を浮かべたままゆるゆると首を
ふる。
「ううん、だいじょうぶ。」
そうして立ち止まる事なく歩き出した、透の後ろを追ってくる。