許嫁な二人
「ふーんさすがだね、これなんか江戸中期のものだよ。」
諸井はまるで学者かなにかのような顔つきで、目の前に並べられた
品々を見つめている。
「うーん、迂闊にさわれないな。」
古ぼけた冊子をみながら、史実の講釈をたれる諸井にうんざりして
良世は部屋のすみでお菓子をほおばっている。
間違っても、お菓子をつまんだ手でこっちの品物を触らないでくれ
と諸井に言われて、おとなしく部屋のすみに引っ込んでいるのだ。
「蔵の中にはまだいろいろあると思うんだけど、
父も忙しくてなかなか出してもらえなくて、、、。」
「いや、いいよ、こっちが急に押し掛けたんだし。」
「夏には蔵をあけるときがあるから、その時にでもまた来て
もらえば、、、。」
「うれしいな、是非お願いするよ。」
まだまだ続きそうな諸井の歴史の研究に音を上げた良世は先に
帰ってしまった。
良世が帰ったあとも、じっくりと歴史的品々を堪能した
諸井は、やっと重い腰をあげる。
石段下の鳥居のところまで唯が諸井を送っていくと
石段の途中で、諸井は感慨深げに神社を振り返って言った。