許嫁な二人
(そんなこと全然知らなかった。いつも大会には
出られなかったから、大会の結果をきくのは
いやだったから、、、)
いつの間にか、石段は終わっていて、鳥居のところで
諸井は、じゃあと手をあげると背を向けて去っていった。
碓氷の名か、、、、唯は思った。
確かに自分はひとりっこだからゆくゆくはお婿さんを
もらってこの家を継ぐのだろう。
”将来結婚すること決まってんの、この二人”
忘れていた耳障りな声が頭の中で響いた。
将来、誰とどんなふうに結婚するかなんて、まだ中学1年生
の唯にはわからない。
でも、確実にわかっていることがある。
もし、家族や唯が望んだとしても、透とは絶対そうならない
ということ、、、。
何故なら、透自身が許嫁であることを嫌がっているから。
この先どんなに素敵な人と巡り会うかもしれないのに
なぜ、そのことが、こんなに胸に重く感じるのだろう、、、
と唯は思った。