許嫁な二人
(6)
透が心配するほどのこともなく、唯は弓道部の
練習についていけていて、透は安心した。
ついていっているといっても、唯の練習メニューは
部長命令で軽めに設定されている。
それを唯自身、申し訳なく思っているようだが、
朝練に一番に来たり、備品管理や掃除を人一倍行なうことで
唯は申し訳なさを紛らわしているようだった。
(唯らしくて、、、)
透は苦笑する。
弱いくせに、なんでも人一倍やろうとして、そして
結局熱をだす。
昔からだ、、、と透は思った。
でもそのうち、1回、2回と定期的に唯は部活を休むように
なった。
学校には来ているようなのに、部活には来ない。
そのことが気になって、とうとう透は同じ1年の女子に
声をかけた。
「碓氷って今日なんで休み?」
「健康診断だって言ってたよ、よくはわかんないけど。」
(健康診断、、、)
どこか体の具合を悪くしているのだろうか。
聞かなくても心配だった気持ちが、聞いたことで透の中で
急速に膨れ上がった。
だから次の日、部室から出てきたところで、唯が一人で
手を洗っているのを見た時、考えるより先に透は唯に声を
かけていた。