許嫁な二人

   「わかった、それならいい。じゃあな。」



 黙ったと思ったら、唐突にあいさつをして足早に去っていく
 透を見て、唯はポカンとした。


  (なんだったんだろう?)


 そう思ったが、透が心配してくれていたことはわかった。

 そのことが嬉しくて、ちょっとはずんだ気持ちで部室に
 戻ろうとすると、入り口のところで2年の女子の先輩が
 三人、こちらを見ていることに気づいた。

 なんだかこちらを見てニヤニヤしている。

 三人の横をすりぬけて部室に入ろうとした唯は、三人の中で
 一番背の高い先輩に声をかけられた。

 たしか香山とかいう人だ。



   「ねぇ、碓氷さんって瀬戸くんと一緒の城元小だったわよね。」

   「はい。」

   「瀬戸くん、やっぱり小学校の時も弓道クラブだったの?」

   「いいえ、瀬戸くんはサッカークラブでした。」

   「へぇっ、そう?」



 香山先輩は大げさにおどろいてみせた。



   「それでさ、つき合った子とかいたのかな?」

   「つき合う?」

   「彼女がいたかってこと。」



 思っても見ない質問がとんできて、唯はとまどった。



   「そんなことはなかったと思います。」



 戸惑いながら唯がそう答えると、香山先輩の右隣にいた
 先輩が口をだした。
< 45 / 164 >

この作品をシェア

pagetop