許嫁な二人
「わかった、それならいい。じゃあな。」
黙ったと思ったら、唐突にあいさつをして足早に去っていく
透を見て、唯はポカンとした。
(なんだったんだろう?)
そう思ったが、透が心配してくれていたことはわかった。
そのことが嬉しくて、ちょっとはずんだ気持ちで部室に
戻ろうとすると、入り口のところで2年の女子の先輩が
三人、こちらを見ていることに気づいた。
なんだかこちらを見てニヤニヤしている。
三人の横をすりぬけて部室に入ろうとした唯は、三人の中で
一番背の高い先輩に声をかけられた。
たしか香山とかいう人だ。
「ねぇ、碓氷さんって瀬戸くんと一緒の城元小だったわよね。」
「はい。」
「瀬戸くん、やっぱり小学校の時も弓道クラブだったの?」
「いいえ、瀬戸くんはサッカークラブでした。」
「へぇっ、そう?」
香山先輩は大げさにおどろいてみせた。
「それでさ、つき合った子とかいたのかな?」
「つき合う?」
「彼女がいたかってこと。」
思っても見ない質問がとんできて、唯はとまどった。
「そんなことはなかったと思います。」
戸惑いながら唯がそう答えると、香山先輩の右隣にいた
先輩が口をだした。