許嫁な二人

 かわいそうだなと唯は思ったが、とても声をかけられる
 雰囲気ではなかった。



   「まあ、しょうがないわよ。」



 突然そんなふうに話はじめた香山先輩が歩き出して、
 他の二人の先輩も後を追っていく。

 そして縮こまっている1年生のそばを通ると、



   「向き不向きがあるからさ、退部するなら
    早い方がいいんじゃない?」



 そう耳に吹き込むように言うと、さっさと歩いていく。

 1年生は崩れるようにそこにしゃがみこんで泣いてしまった。






   「なあ、森さん、碓氷さん知らね?」



 2組の教室にあらわれた諸井は、そう言いながら
 窓際の席に座っている良世のそばに寄っていった。



   「そういう私も探してんの。最近昼休みにいっても
    ちっとも教室にいなくてさ。」



 良世がしかめっ面をしながら答える。


   「うーん、どうしたんだろ?」

   「そうだね。」
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