許嫁な二人

 良世と諸井がそんな会話を交わしている頃、唯は
 弓道場の裏にいて、同じ1年の女子、佐川 はるかに
 弓のひき方を教えていた。



   「こうまっすぐ、腕をひくというより肘をひく感じで。」

   「うん、何となくわかる。」



 香山先輩に心ない言葉を言われ、泣いてしまった佐川を
 唯は一生懸命はげました。

 そして、弓道を教えると約束した。

 だからこうやって昼休みになると、二人で弓を持ち出して
 練習しているのだ。



   「碓氷さんの教え方ってわかりやすい。そう思うと
    香山先輩は言ってることが難しくて、それで私ができないと
    いらいらするだけだったもん。」



 慣れてくると佐川は、あの時泣いたのが嘘のように、香山先輩
 のことを厳しく批判した。



   「評判よくないんだよ、あの先輩。それに瀬戸くんに
    目を付けてるって噂だし。」

   「目を付ける?」

   「うん、見ててごらんよ。他の人には素っ気ないのに、
    瀬戸くんには甘いから、もう誰が見てもモロわかる。」

   「でも、瀬戸くんは1年だし、、、。」

   「そんなの香山先輩には関係ないの。気に入れば誰でもいいんだって、
    部長の上条先輩にも言いよってたらしいけど、相手にされなかったんで
    瀬戸くんにのりかえたんだって。」
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