許嫁な二人
彼女、碓氷 唯が、透が毎朝むかえにいく相手だ。
最初は幼稚園のとき、母親同士が仲がよくて、母子4人そろって
通っていたのが、小学校へ上がり子供だけになると、2人で
通うようになった。
低学年のうちはよかったが、学年があがり男の子同士のつきあいが
大切になるにつれ、透は唯と一緒の登校をいやがるようになる。
ところが、そこに口をはさんだのが祖父の巌だ。
「世が世なら、碓氷のお嬢さんは、桜下の姫君だ。
わが瀬戸家は、代々碓氷家につかえ、近く主人をお守りしたもの
透、おまえはいつも側にひかえ、
お嬢さんをお守りせねばならん。」
いったい何時の時代の話だよ!と透は反発したが、瀬戸家において、
祖父、巌の言葉は絶対だ。
透の反発もむなしく、祖父の言いつけは、今もしっかり実行されている
抗うことを許されない大きな壁のことを思い浮かべて、”ちえっ” と声に
だした透は、後ろから ”なに?” と問いかけられて
唯をふりかえった。
白い肌にぷっくりとふくれたような唇が、半分ひらいている。
その唇が、やけに赤いな、、、、と透は思って、すぐある考えに
つきあたり体ごと勢いよくふりむいた。
「お前、、、。」
突然、恐い顔をしてふりむいた透の考えを読み取って、唯は小さく
体の前で両手をふった。