許嫁な二人
(7)
「あーこっちこっち。」
暖簾をかき分けて入ったそこには、満面の笑顔をうかべた
良世がいて、きょろきょろする唯にむかって手まねきをしていた。
今日は、1学期の終業式で、給食を食べて下校だった。
中学校の夏休みは小学校と違って、部活があるからのんびりは
できない。
だからせめて、終業式の今日は美味しいものでも食べて帰ろうと
いう良世の提案で、唯は学校近くの甘味処の暖簾をくぐった。
「大丈夫? 学校帰りにこんなとこに寄って。」
辺りをうかがいながらそそくさと席についた唯に、良世は
ニカッと笑うと
「平気平気、みんな結構ここに寄ってるよ。」
とのんきなことを言う。
心配に思う唯だったが、なんだか少し大人びたようにも感じて
満更でもなかった。
「それにさ、1学期がんばって部活を続けた唯ちゃんの
お祝いをしたくてさ。」
「えっ、、良世ちゃん、、、。」
「本当によくがんばったね。」
「うん、、、。」