許嫁な二人
透もまた同じように感じていた。
今までの距離が埋まるように、もう少しこの幼馴染みと
歩いていたい。
ひょっとしたらあの時掛け違えたボタンをもう一度
掛けなおせるかもしれない。
良世の言う通り、唯は一学期、本当によくがんばった。
唯が何事もなく部活を続けれたことが、透はうれしい。
だからなのか、いつもより素直になれる自分がいた。
二人がバス停に着くのと、バスが角を曲がってやってくるのは
同時だった。
二人は無言でバスを見つめる。
プシューっと音をたててバスのドアがひらき、タラップが
見えた。
「ありがとう、透くん。」
「うん、また部活でな。」
「うん。」
バスに乗り込んだ唯が小さく手を振っている。
透も自転車のハンドルから手をはなして、手を振りかえした。
バスが発車し、唯の姿はもう見えない。
でも、透はいつまでもバスの後ろ姿を見つめていた。