許嫁な二人
(8)
夏休みに入った途端、気温はぐんぐん上昇して、
毎日うだるような暑さが続く。
そんな中、3年生を中心とした夏の弓道大会で、
桜下第二中は良い成績をおさめていた。
そして、幾つかある大会の間をぬって、3年生は市の
弓道場をつかった強化合宿、1、2年生は学校の弓道場
つかっての合宿がおこなわれることになった。
「いいなぁ、3年生は、市の弓道場って山寄りにあるから
結構、朝晩、涼しいんだろ。」
「そんなかわんねぇんじゃないの。」
市の研修施設の中で、宿泊準備をしている1年生の中から
そんな会話が聞こえてくる。
学校には宿泊できる施設がないので、合宿中は学校から2キロ
はなれた市の研修施設に、1、2年は泊まることになっている。
学校までの行き帰りはランニングだ。
「準備ができたものから、施設前に集合、学校にむかって
走るぞ。」
2年生の合宿リーダーが声をかけていく。
炎天下の2キロのマラソンは唯には無理だと判断されて
唯は救急用具や、救急用飲料などをつんだ自転車で伴走
するように言われている。
みんなと一緒に走らないことを唯は申し訳なく思ったが、
途中のトラブルに備え、救急用具をはこぶのも大切な仕事だと
うじうじするのをやめることにした。