許嫁な二人
弓道場での練習を終え、研修施設に帰ってきてから
女子は夕食の準備、男子は研修施設のまわりの草取り。
夕食を終え、女子は夕食の片付け、男子はビデオを見ながら
練習の反省や練習計画のミーテイングにそれぞれ別れ、
皆がバタバタしているときだった。
「瀬戸くんが?」
「そう、3階の用具室に来てくれって。」
同じ1年生の女子部員にそう声をかけられて、唯は戸惑った。
そんなところでなんの用事があるんだろう?
「すぐに行った方がいいよ、急いでたから、
皆には言っとく。」
「う、うん、ありがとう。」
戸惑いながらも、言われたように唯は3階に足をむけた。
1、2階は弓道部が使っているが、3階は使用していない。
だから、薄暗い中を唯は進んでいき、用具室のドアをあけた。
閉じ込められた夏の空気がムッと唯を取り囲む。
物がたくさん詰め込まれた縦長の部屋はとても狭く見えた。
「透くん、、、。」
名前を呼んでみるが、返事はない。
1、2歩、部屋の中へ進んだときだった。
開いていたはずのドアが、バタン!と勢いよく閉まり、唯は
びくっと体をふるわせて、後ろを振り返った。
急いでドアに近づき、ドアノブを握って押すがあかない。
ガチャガチャとノブをまわしてみるが、無駄だった。