許嫁な二人

 弓道場での練習を終え、研修施設に帰ってきてから
 女子は夕食の準備、男子は研修施設のまわりの草取り。

 夕食を終え、女子は夕食の片付け、男子はビデオを見ながら
 練習の反省や練習計画のミーテイングにそれぞれ別れ、
 皆がバタバタしているときだった。



   「瀬戸くんが?」

   「そう、3階の用具室に来てくれって。」



 同じ1年生の女子部員にそう声をかけられて、唯は戸惑った。

 そんなところでなんの用事があるんだろう?



   「すぐに行った方がいいよ、急いでたから、
    皆には言っとく。」

   「う、うん、ありがとう。」



 戸惑いながらも、言われたように唯は3階に足をむけた。


 

 1、2階は弓道部が使っているが、3階は使用していない。

 だから、薄暗い中を唯は進んでいき、用具室のドアをあけた。

 閉じ込められた夏の空気がムッと唯を取り囲む。

 物がたくさん詰め込まれた縦長の部屋はとても狭く見えた。



   「透くん、、、。」



 名前を呼んでみるが、返事はない。

 1、2歩、部屋の中へ進んだときだった。

 開いていたはずのドアが、バタン!と勢いよく閉まり、唯は
 びくっと体をふるわせて、後ろを振り返った。

 急いでドアに近づき、ドアノブを握って押すがあかない。

 ガチャガチャとノブをまわしてみるが、無駄だった。
< 59 / 164 >

この作品をシェア

pagetop