許嫁な二人
唯が退部、いや、学校自体にこれなくなったことを
透が知ったのは、2学期がはじまってからだった。
「なんでも病院が併設された東京の学校へ
かわったらしいよ。」
諸井からそう聞かされ、透は頭をガツンとなにかで殴られた
ように感じた。
あれから唯は夏休みの部活には顔をださず、誰が何をして
唯があそこに倒れていたかは、わからずじまいになった。
なぜか、透が唯を呼び出したということになっており、
2学期がはじまると、唯の転校の噂とともに
透と唯が隠れてこそこそ逢っていて、それを見咎められて
唯は学校に来れなくなったのだという噂があちこちで
囁かれた。
噂を聞いて諸井は心配したが、透は黙ったままだった。
そして心の中で、やりきれない怒りを感じていた。
いつもそうだ。
おもしろおかしく騒ぎ立て、根も葉もない噂で人を傷つける。
(またか、、、)
と透は思っていた。
また唯と二人、噂に傷つけられるのだ。
それに、唯が学校に来なくなって、透は再び摑みかけていた
何か大切なものが、自分の前から消えたのだと思い知る。
よく知らない女の子に告白されるたび、なぜ唯の顔が
心にうかぶのか、、、知る機会はもう、自分には
やってこない。
透は空っぽな両手を見つめ、立ちつくした。