許嫁な二人
(9)
窓から射し込む日差しが気持ち良くて、机につっぷして
眠りを貪っていたら、つんつんと頭を突かれて、透は
薄目をあけた。
それを見た、亮平が前の席にどかっと座る。
「なあ、なあ、3組にきた転校生見た?」
気味が悪いくらい顔をニヤニヤさせている亮平を睨みながら
透は
「知らねえ。」
と返事を返した。
「それがさー、まっすぐな黒髪がめっちゃきれいでさー
おしとやかなお嬢様って感じの子なんだよぉ、でもって
こう、かわいくてさぁ。」
遊び仲間の亮平は、気に入った女の子を見つけると、がーがー
うるさい。
眠りを妨げられた不機嫌さをもろに顔にだして、透はぷいっと
顔を窓のほうにむけた。
ここ桜林高校の校庭も透の母校、桜下第二中と同じで桜の木が多い。
もっとも秋の今は赤や茶色に変わった葉が風にふかれている
だけだけれど。
うるさい亮平のおしゃべりを聞き流しながら、見るということもなく
校庭を見ていたら、つんと肩を突っついて亮平が口調をかえた。
「まあいいけどさ、女の子のことは。それより今日はゲーセン
に寄る?それとも小里のラーメンにする?」
「今日はラーメンって気分だな。」
そう透が答えると亮平は頷き、
「了解、ゆうちゃんにも言っとくわ。」
と言って、席をたっていった。