許嫁な二人
中1の夏に唯が退部して、その退部の原因になった問題を
不祥事にされたくなくて、きちんと犯人探しをしなかった
弓道部に、透はやりきれない怒りをだいた。
声を張り上げても、聞こうとする者はいない。
透の腹の中に溜まった怒りは不協和音を生み、透は部内での
自分の居場所を無くしていった。
弓道部に対する怒りだけではなかった。
根も葉もない噂に興じて、唯の名を傷つける同級生たち。
透は同じような年頃の若い集団が嫌になり、何事にも
まじめに取り組まなくなる。
勉強は出来たから、進学には困らなかったものの、
透はそれまでの自分が無くなったかのように荒れた。
そういう透の過去を知っているくせに、目の前の柴坂は
にこにこしながらいつも透を誘ってくる。
弓道をやらないかと、、、。
「俺、弓道には興味ないんで。」
目元に不満をにじませ、低い声でそう言った透に柴坂は
真顔になって、きゅっと口を引き結んだ。
でもまた、すぐに笑顔になって、透の肩をぽんぽんとたたくと
「ま、気が向いたら来いや。」
と言い捨てて、去っていく。
そんな柴坂の後ろ姿を眺めて、踵を返したところで
透は横から肩に腕をまわされた。