許嫁な二人
「やっとできたぁ? 悠ちゃん、俺、待ちくたびれちゃった。」
「うるさいよ、亮平。」
同じように、亮平の前にもラーメン鉢を置き、悠はぱちんと
亮平の頭をはたいた。
「ツケたまってるぞ、亮平。」
「あっちゃー。もうちょっと待ってよ、月末には支払う。
今までこうして小里の売り上げに貢献してんだからさ。」
ここ小里は、悠の家であり、お酒をだす小料理屋だ。
だから高校生の出入りは禁止だが、亮平と透はしょっちゅう
ここにラーメンを食べにくる。
というのも1年半前に悠の父親が亡くなり、遊び仲間だった悠が
学校以外の時間は、ここで働きはじめたからだ。
「おまえが美穂以外の女と噂になってるのってめずらしいな。」
「だから、なんでもないって。」
そうつっけんどんに透が返事したところで、ガラっと店の戸が開いた。
「噂をすれば、、だな。」
悠がニヤっと笑いながら言う。
後ろから歩いてきた人物が、自分の肩に手を置いたのを
透は感じた。
「美穂。」
「透。」
透の呼びかけに、透の名を呼んで答えた彼女が、自分をみて
うれしそうに微笑むのをみて、透は静かに目をふせた。