許嫁な二人
(11)
カーテンの向こうがぼんやり明るくなったのに
気づいて、唯は目を覚ました。
日が早く昇る夏になると、なぜかいつもはやく目が覚めて
しまう。
今は夏休みだから学校はないし、ゆっくりしていいのだけれど
一度目が覚めてしまうともう眠れないから、唯はベッドをぬけだし
着替えて外にでた。
夏とはいえ、早朝の空気はひんやりとする。
唯の家は神社の横にあり、裏にちょっとした杉林ひかえているからか
空気は清々しくて、唯は胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
竹ぼうきを持って、神社にむかう。
神社内を掃き清めるためだ。
石段近くの参道にそって竹ぼうきを動かしていると、たっ、たっ、たっと
リズミカルな足音が近づいて来るのがわかった。
石段を登ってくるのは、新聞配達の男の子だ。
自分と同じ高校生ぐらいの男の子は、唯をみるといつも帽子のつばに
手をやって、ちょっと会釈をしていく。
唯もだまって、頭を下げる。
それが、今日はひどくリズムを崩した足音をしていると思ったら、
男の子は帽子の影に顔を隠したまま、ずんずんと唯の方に歩いてきた。
間近まできて顔をあげた男の子は戸惑った顔で口を開いた。
「これ、石段の下にいたんだけど、、、そのままにしといたら
死んじゃうんじゃないかと思って、、、。」
男の子が持っていた新聞をわきにどけると、そこには小さな子猫が
丸まっていた。
「俺、新聞配達が終わったら、もう一度寄るから、ちょっと
預かってもらえないかな、これ。」
重ねて言われて、唯は頷いた。