許嫁な二人
バスが着いた奈良では、大仏をみたり、奈良公園で鹿に
せんべいをやったりした。
ほとんどグループで行動なので、グループがちがう透とは唯は
全然逢わなかった。
それでも面倒見のよい良世のおかげで、唯は楽しい時間を過ごし
一行は今晩の宿泊先である京都のホテルに着いた。
「いよいよだね。」
ぞろぞろとバスを降りていきながら、良世がそんなことを言う。
何が ”いよいよ” なのだろう?
そう思った唯がきょとんとした顔で良世を見ていると、
「旅行といえば、恋バナでしょ。恋バナ!」
「ええっ」
唯がびっくりしてみせると、良世はおかしそうに笑った。
「なに、その反応、オバンくさい。」
「え、でも、、、。」
口ごもる唯は、歩も止めてしまったから、あわてて良世に
腕をとられてひっぱられた。
「もう、唯ちゃん、そんなところで立ち止まったら
だめじゃん。」
そう言われて、後ろの人に迷惑をかけてしまったかと思った唯が
後ろをふりかえると、ばっちり透と目が合った。