許嫁な二人
(12)
屋上に続くほとんど誰も来ない階段にいたのは、連れてこられて
告白を聞くためだった。
申し出を断った唯に、告白した男子は不快そうに顔をゆがめ、
舌打ちして降りていった。
二学期がはじまって、2週間がたっていた。
夏に逢ったとき良世ちゃんは、告白されたら一度はつきあってみなよ
と言ったけれど、唯はとてもそんな気にはなれない。
教室に戻ろうと、階段を降りかけた時、
「唯!」
上から名前を呼ばれた。
振り向いて仰ぎ見たそこには、2〜3人の人影があったけれど、
踊り場の上部の窓からさしこむ光が眩しくて顔はわからない。
するとその中の一人が、トントンとリズミカルに階段をかけ降りてきて
唯の隣に立った。
「悠くん。」
学校で逢おうと言ったのに、なかなか逢えなかったから久しぶりの
再会だ。
「よ、やっと逢えたな。」
悠がそう言った時、上からもう一人の男子がダダダとすごい勢いで
降りてきて、悠のとなりに立った。
「なんだよ、悠ちゃん、なんで名前で呼び合ってるの!」