雨のようなひとだった。
街路樹にもたれかかりつつ、携帯灰皿を片手に胸ポケットから煙草を取り出した。
社内の喫煙ブースは行き辛いここ数か月、ほぼ半日以上吸わずにいることが増えていて健康にはいいはずだと思う。だけどストレス発散の一環として吸っていた身としては、このペースに慣れるまで精神的には良くなかった。
「‥‥っあー…うめえ」
思いきり吸い上げ、吐き出す。
いい匂いでは決してないことくらい自覚していた。
ふたり前の恋人は、最初こそは吸ってる姿がかっこいいだのぬかしていたくせに最終的には『私のためにやめてくれなかった』とか言い出して別れたんだっけ。
キスが美味くないとかなんだそれ。