雨のようなひとだった。
「大丈夫ですよ。俺もさっき来たばっかなんで」
ほら、と火を点けたばかりの煙草を見せて何てことないように笑ってみせると、ほっとしたように眉が下がった。
彼女は俺といる時、いつもどこか不安気だ。
その理由を俺は勿論知っているけど、触れない。
触れてしまえば彼女は俺から簡単に離れていってしまうことをわかっているし、本来ならそうしなければいけないことはわかっている。
ただ、俺が知っていることを彼女は知らない―――フリをしているはずだ。
だから言わない。
まだ離れられない。
「帰りますか」
携帯灰皿にぎゅう、と煙草を押し付けて胸ポケットにしまい、彼女に微笑みかけた。
―――あの雨の夜から、2か月が経っていた。