雨のようなひとだった。

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 彼女を思い出そうとするといつも珈琲の薫りが伴う。
 それと、笑顔。
 派手な顔立ちなわけではないし、こんなこと言ったら怒られそうだけど特別誰からも目をひくような美人というわけでもない。
 だけど、どこぞの小説や漫画で使い古された表現ではあるけれど、大輪の花が咲いたような、ぱっとその場が華やかになるような。彼女の笑顔はそういう力を持っている。

『いつもありがとうございます』

 常連相手への挨拶も上滑りすることなく、心がこもっているのを感じる。
 勘違いだと言われたらそれまでだけど。


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