雨のようなひとだった。

「おかわりですか?」

 色々考えていたら見当違いな質問をされた。しかも嬉しそうに。
 いただきますと口にしてから黙々と食材を運び続けていた箸がぴたりと止まり、俺の目はまっすぐ彼女の手元へと注がれていたらしく、気付いた彼女は気を利かせて立ち上がってくれた。

「あっ…あ、じゃあ、お願いします」
「ペース早いですね。お腹すいてました?」
「やー……昼遅めだったんだけどね。美味いからかな」
「嬉しいな。ありがとうございます」

 既に皿の中は空だ。
 そこまで腹が減っていたわけでもないけど、あっさりした美味い塩味の鍋の彩りたちはどんどんと俺の腹の中へ収まっていく。
 彼女も美味しそうに口を大きく開けてもぐもぐしていておかわりと注いでいた。
 美味しそうに食事をする女の子の姿っていうのは可愛いしいいものだ。食欲と並んで何ていうかこう……だめだ、きっと疲れてるんだ、俺は。

 俺の気持ちを知ってから知らずか――知ってたらかなりの小悪魔ぶりと褒めたたえたいくらいだ――、目が合った彼女は首を傾げて笑った。



 
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