雨のようなひとだった。

「……よくやってるよなぁ、俺」

 好きな女がひとつ屋根の下に居て、手を繋ぐ以上の事をすることのないアラサー男子。
 なんてことはない。
 嫌われてしまうのが怖いだけの、臆病なだけの自分を内心嗤いつつ、俺はあの夜の彼女の涙を未だ忘れられずにいた。



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