雨のようなひとだった。
薬指と中指に煙草を挟んで確認するように振り上げる様は、大学時代に結城が女子たちの間でカッコイイと騒がれていたことを思い出させた。
たしかにカッコイイな。
喫煙者には肩身の狭い世の中だけど、色男は何やったって決まるもんは決まる。
俺がこいつの顔面偏差値だったらもっと彼女にも強気に迫って―――
「オイ聞いてんのか」
ベシッと髪を叩かれて我に返った。
ブラックコーヒーが入った店のマグカップで唇を濡らした結城は睨んでからまた煙草を振る。
「おまえは彼女に惚れてんだろ」
「まー…可愛いなって思ってたし」
「で、家に連れ込むとこまで頑張ったんだろ」
「連れ込むっつーと違う気が…」
「じゃあなんだよ。しけこむ?」
「もっとちげーよバカ。同居だ同居。流行りのシェアハウス的なヤツ」
「そんで?手だけは繋いだと」
「……まあ」
頷くと、はー、と大きくため息をつかれた。