雨のようなひとだった。
結城に言われなくたってわかってるんだ。
俺だってツレにそんな話されたら、「お前何グズグズしてんだよ」くらいのことは言ってハッパかけてると思う。
だけど彼女にそんなこと出来ない。
「……信頼してますって顔に貼りつけてあんだぜ?」
「なんだ牽制されてんの?見込みねぇじゃん」
「ぐっ」
そうとも言うかもしれない。
でも1ミリも好きでもない男と手なんか繋ぐだろうか?
俺だったら嫌だ。好きでもない女と手を繋ぐなんて、金もらっても考えるレベルに嫌だ。なんならヤるよりも嫌だ。
だから彼女も少なからず好意はあると、自分では思っている。
例え恋愛ではなくて親愛だとしても。
注文したサンドウィッチを届けてくれた可愛い店員の女の子に笑顔を振りまいている結城を呆れて見つつ、俺は二本目の煙草に火を点けた。