雨のようなひとだった。
ドアに背をびったりとつけたまま、ずりずりと床へ落ちていく。
壁の向こうでは水音が続いていた。風呂をためているんだろう。
風呂をためることすら忘れていた。
ベッドに身体を沈めてから全く動けずにいた。
尻が床までおりたところで膝を抱えなおし、ため息が出た。
(俺こんな臆病だったか……?)
不甲斐なさすぎるというか、うじうじしていて我ながら気持ちが悪い。
押していけない……結城にもとてもじゃないが言えずにいる最大の理由が俺の前に立ちはだかって、取り払おうとしても出来そうにない。
マスターも彼女もきっと、俺がその壁を取り払う勇気も度胸もない事を見透かしていたから同居を了承したんだと思う。
俺だけじゃない。
結城だって絶対俺と同じ立場になったらグイグイ行くことなんて出来なくなる。