雨のようなひとだった。

「……大丈夫ですか?」

 僅かだが、彼女が震えている。
 肩を抱いていた手をそっと離してから彼女の顔を覗きこむと、なぜか泣きそうな顔をしていた。

「えっ?」

 俺、何かしたか?
 抱き寄せたことに間違いはないが危ないと思って咄嗟に出た行動だし、彼女だってそんなこと絶対に理解しているはずなのに。

「あの……どっか痛いとこありました?咄嗟だったからあんま気を配れなくて」
「いえ、いえ……大丈夫です」

 絶対大丈夫じゃない。

「ホントすみません。俺、がさつだから」
「本当に大丈夫です。あの……気を使わせちゃってごめんなさい」
「気を使ったわけでは」
「本当に……ありがとうございます」

 俺の声を遮った彼女は取り繕うように笑った。
 いつものような花のような笑顔ではなく、消えてしまいそうに見えた。




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