雨のようなひとだった。

 いつもはきちんと括られている髪が肩に下り、その髪の先から雫がぽたぽたと落ちてコートの色が変わっているように見えた。
 雨がいつから降りだしているのかつい先程まで社内にいた俺はわからないが、随分長い時間外にいたことは間違いないだろう。
 そっと触れた肩がとても冷たい。
 まだ11月で日中は暑い時もあるとはいえ、夜は冷え込む。

「……風邪、ひきますよ」
「………そうですね……」
「家は?よければ送ります」
「………家…」
「このままじゃ本当に身体によくないです。家はどちらなんです?」
「………そうですよね……」

 まるで他人事のようにぼんやりと相槌を打つ彼女の肩を抱いて、ひとまず俺は自分の部屋へ連れて行くことにした。


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