雨のようなひとだった。
……が、寸前で動きは停止した。
どうしたのかと声を掛けかけると、彼女がそっと俺を仰ぐ。
(いや待てそれはマズイ)
俺は特に上目遣いに弱いとかそういう性癖はない。
でも彼女に初めてされた上目遣いの破壊力はマズイと瞬間に察知し、何てことのないふりをして俺も明後日の方向を仰いだ。
「ど、どうしました?」
「えっと……ここ、玄関…なので…」
「あ」
すっかり頭から飛んでいた。
狭い玄関で抱き合っているのもまたオツかもしれないが、さすがに立ったままだし疲れも伴う。
「入りましょう?」
「あ、ハイ、そうですね」
モタモタしている間に彼女にリードを取られてしまった。
どうしても彼女の前では格好つけかけてもすぐにボロが出てしまう。
誰よりも格好良くいたいのに。