雨のようなひとだった。

 あの夜の判断が間違っていたとは今も思っていない。
 だけど、正解だったのかと問われたらわからない。自信がない。

 下心がまるでなかったと言えば全くの嘘だし、何より惹かれつつあることを自覚した相手が雨の中傘も差さずに立ち尽くしていたら、誰だってそうするだろう。
 綺麗事なんて反吐が出るって思ってるけど、そこまで悪い男でもない。と自分では思っている。

 だから、今あの夜に戻ることができたとしても俺は同じ事を繰り返すだろう。
 優しくて狡くて愚かな、雨のような人とのひとときを、また繰り返すのだろう。


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