雨のようなひとだった。
髪を撫でようとしていた手を止められ、身体をずらされた。
肩を抱けるほど近かった距離が少し離れて心寂しくなったところに、下ろされた右手と彼女の左手が絡められた。
「え、あの」
「……今夜だけなので、いいですか」
そんなこと言われて断る男がいたら教えて欲しい。
ふふ、と悪戯っぽく笑った彼女はきゅっと手に力を入れてくる。
「大丈夫、変な事はしないですから」
「してもいいですけど」
「その気もないのに?」
「…全くないことはないですよ。俺だって男なんですからね」
「………ごめんね」
「謝らないでくださいよ、哀しくなるんで。何なら褒めてほしい理性の男だって」
「あはは」
おどけたように言ってみせれば、俺の好きな笑顔で応えてくれた。
それでいい。
それがいい。