雨のようなひとだった。
夜の寝室に男女が二人。
狭いベッドに並んで手を繋いだまま天井を仰いで、一緒に目を閉じている。
幼稚園児の昼寝ではない。
大人の男女が二人、手しか触れないまま一夜を過ごそうとしていた。
外からはしとしとと静かな音が聴こえてくる。
雨が降ってきたんだろう。
夜から明け方にかけて雨が降る予報がでていたのを思い出した。
「……降ってきましたね」
「……このお家に初めて連れてきてもらったのも、雨の夜でしたね」
「あ、覚えてます?」
「勿論。……色々ありましたから。それに、真己さんに甘え始めたのもあの夜が最初です」
初めて彼女の涙を見た夜。
話さないことを無理強いして聞く趣味はないから、深くは聞かない。
傷の深さと比例して話したくないのかもしれないが、俺には理由を話すことで言い訳めいてしまうことを彼女自身が嫌がっているように感じた。