雨のようなひとだった。
「案外落ち込んでねーのなって思って」
「ハァ?」
「や、ホラ……ここにも普通に来るし?」
軽く訊いてきている結城だが、手元ではストローがグラスの中で高速回転させられていて未だ溶けない氷がガシャガシャとぶつかりあっている。
思わず吹き出して結城の肩を叩く。
「気ィ遣ってたのかよお前!らしくねぇーーーーー」
「だ!お前なぁ!」
「ヤベェーーらしくなさすぎて笑う」
「うるせぇ笑いすぎだろ!」
「……あっ、すみません」
店の雰囲気に相応しくない大声で笑ってしまったことに今更気づいてペコペコと周囲に頭を下げた。
特に咎めるような視線を浴びたわけでも店内が込み合っているわけでもないが、やはりその店に相応しい態度というものは必要だ。