雨のようなひとだった。
そう訊ねたら、マスターは何てことない顔をして答えてくれた。
『そしたら自分の見る目のなさを嘆くのみです』
(デッカイよなぁ)
マスターは感心のあまり言葉を失った俺の肩を優しく叩き、目尻に皺を刻んだ。
『真己くんも彼女も、とてもいい子ですよ。人を見る目に自信が持てました』
『……褒めてるんです、よね』
『勿論』
『なんかすごく子ども扱いされてる気がするんですけど。俺もう30になるんですよ』
『まだまだ子どもですよ』
『そりゃ……マスターから見たら……』
『ですからね』
俺の声を珍しく遮ったマスターは、夜が開けるまで雨が降っていたとは思えないほどの晴天に手を伸ばす。
そしてその手を俺の頭へポンと置いた。