ゼロの相棒
孤独な魔法使い
「はなしてやれよ。」
大人にしては幼い声が店内に響いた。
主人は私の髪の毛を掴んだまま振り返る。
私も、体をよじって、声のする方を見た。
「あぁ?なんだお前……。」
主人の背後には十歳ぐらいの少年が立っていた。
髪の毛は月のような黄金の色に染まっていて瞳は深い藍色だった。
少年は、静かな顔で、私たちをじっ、と
見つめている。
「ガキかよ…なんか文句でもあるのか?
俺はこいつに店を何回も荒らされているんだ。
被害者は俺の方なんだぜ?」
すると、少年がちらり、と主人の方を見て言った。
「奴隷屋に売る、と聞こえたんだが…」
主人は、悪びれもせずに言い放つ。
「あぁ…。こいつをもう野放しにしておくわけにはいかないからな。」
それを聞いて少年の目の色が深みを増した。
私は、その時、確かに店の空気が変わったのを感じた。
少年はスッ、と主人の前に手をかざす。
その瞬間、私は目を奪われた。