ゼロの相棒
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都市に入ると、そこは静かな森とは全く違う世界だった。
賑やかで明るい町は、人々の笑い声で満たされていた。
都市を一人で歩くのは初めてだな…。
昨日ゼロと二人で歩いた道を思い出して、私は迷わないように進む。
少し緊張しているのが自分でもわかった。
勝手にゼロの事詮索するようなことして
ゼロ…怒らないかな…。
それは、私がずっと気にしていたことだった。
ゼロは、出会った時からそうだけど、
自分の過去のことを語りたがらない。
私にしても、ゼロ以外の人から聞いた目的が、とても傷つくようなことだったとしたら
信じられないと思う。
でも、グランも私の背中を押してくれたし
せっかくここまで来たんだからゼロの昔の思い出ぐらいは聞いてもいいよね。
やがて、目の前に、昨日の酒場が見えてきた。
緊張感が高まった。
私は、今まで、あまり人と進んで話したりことがなかったから
ゼロの知り合いとはいえ、一人で話しかけるのは勇気がいる。
でも、たぶん、ゼロがいないからこそ
聞ける話があるんだろう。
私は、ふぅ、と深呼吸をすると
思い切って、酒場の扉を開けた。