ゼロの相棒
ゼロは遠慮がちに
「ただの孤独な旅人ですよ…。」
と、言った。
ただの旅人がこんな魔力を持っているなんて少し変だ。
私はそう思っていたが、口には出さなかった。
たぶん、ゼロも訳ありなのだろう。
ジェノバはふぅ…。と息を吐いて、私とゼロを交互に見た。
「とにかく、フィオネが無事でよかった。
さぁ、夕飯の支度をしておいたよ。ゼロ君も食べていってくれ。
たいしたもてなしはできないが、今夜の宿が決まっていないのなら、ここに泊まっていきなさい。」
せめてものお礼だ、とジェノバはゼロを家へと引き入れた。
「フィオネ、ゼロ君と一緒に、庭にある薪を持ってきてくれないか。」
ジェノバは大きな鍋を持ってきて言った。
ジェノバ以外の人と夕飯を食べるなんて何年ぶりだろう。
あの大きな鍋も、二人で使うには大きすぎた。
なんだか心に、忘れていた感情が湧いてきた気がした。