ゼロの相棒





ゼロは遠慮がちに


「ただの孤独な旅人ですよ…。」


と、言った。




ただの旅人がこんな魔力を持っているなんて少し変だ。



私はそう思っていたが、口には出さなかった。


たぶん、ゼロも訳ありなのだろう。




ジェノバはふぅ…。と息を吐いて、私とゼロを交互に見た。




「とにかく、フィオネが無事でよかった。

さぁ、夕飯の支度をしておいたよ。ゼロ君も食べていってくれ。


たいしたもてなしはできないが、今夜の宿が決まっていないのなら、ここに泊まっていきなさい。」




せめてものお礼だ、とジェノバはゼロを家へと引き入れた。




「フィオネ、ゼロ君と一緒に、庭にある薪を持ってきてくれないか。」




ジェノバは大きな鍋を持ってきて言った。


ジェノバ以外の人と夕飯を食べるなんて何年ぶりだろう。



あの大きな鍋も、二人で使うには大きすぎた。




なんだか心に、忘れていた感情が湧いてきた気がした。




< 18 / 508 >

この作品をシェア

pagetop