ゼロの相棒
「じゃあ…もうひとつだけ。ゼロはなんで旅をしているの?」
はぁ、とゼロはため息をついた。
「お前なぁ……。」
「これも語りたくない?」
ゼロは顔をしかめて私を見たが、やがて空を見上げたまま言った。
「………相棒を探してるんだよ。俺についてきてくれるやつを…。
行かなくちゃいけない場所があるんだ。」
ゼロは、まっすぐどこか遠くを見るような瞳で続ける。
「そこは……一人で行っても…。
相棒がいないと意味がないんだ。」
藍色の瞳が少し深みを増して、夜の景色に溶け込んだ。
孤独だ、と言っていたが、ゼロはいつからこんな生活をしているんだろう。
「私は行ってみたいところとか、考えたことないわ…。
この町から出ようなんて思わなかったもの。」
私の言葉にゼロはこちらを向く。
「闇町で盗みを繰り返すなんて……嫌になったりしないのか?」
私は少し考えてから口を開く。
「私はジェノバから今までいろんなものをもらってきたから。
今度は私がジェノバの為にこの命を使おうって、決めたの。」
すると、ゼロが再び空を見上げて呟いた。
「そんな風に誰かの為に生きれたら、俺も幸せなのかな…。」
ゼロの横顔は、月に照らされて
どこか、寂しそうに見えた。