ゼロの相棒




「死ぬまで、来れないと思ってたけど

…ずっと、ここに来たかったんだ。」





ゼロは、ゆっくりと離れに向かって手を合わせた。




私もゼロの隣で手を合わせる。





そこには、確かに、“いた”のだ。


ゼロの両親の魂が。




ここで、一生を終えたのだ。





私は花園に吹いている風が、一瞬温かくなるのを感じた。




気のせいだって言われれば、
そうなのかもしれない。



私が隣を見ると、ゼロもどことなく優しい表情をしていた。



やっぱり、ここには“ある”んだ。




ゼロを見守っている強い想いが。




私は、花びらの舞う小さな小屋の前で、
大きく深呼吸をして



そしてお辞儀をした。





心の中で、そっと呟く。




私が、ゼロの相棒のフィオネです。


立派に、相棒の役目を務めます。




だから、これからも、ずっと。


ゼロの隣にいることを許していただけますか…?





その時、風がざあっ、と花吹雪を舞い上げた。




私は、風に乗って舞い散る花びらたちを見つめる。








ゼロを頼みます、と。


そう言われたような気がした。





< 215 / 508 >

この作品をシェア

pagetop