ゼロの相棒






ジンには、星の町で会ったけど
確かにゼロと同じように、何を考えているのかわからないような人だった。




優しく、頭の良いジンと話していて、なんでも器用にこなしていけそうな印象を持った。




ジェフはそんなジンに嫉妬しているのだろうか。




…ラグナのことも、ライバルだという理由の一部なんだろう。





その時、ゼロがちらり、と壁時計を見ながら言った。





「フィオネ。そろそろ出るか。」




私は、その言葉に、はっ、とする。




ラグナとジェフも黙ってゼロの方を見た。




「次の町は、最果ての丘に一番近い町なんだ。…宿に泊まるのは、その町でたぶん最後だな。」







“最後”






その言葉が私の頭の中を駆け巡った。





その時、私は旅の終わりを確かに感じた。




なんとも言えない黒い気持ちが
私の胸に込み上げる。





ゼロはさっき“未来が見えない”と言った。



それは、私も同じだ。




フィオネとしての未来も、“相棒”としての未来も見えない。






その時、ラグナが私の肩を叩いて言った。




「また、ゼロとこの店に来なさいよ。
……約束。破ったら承知しないわ。


そのネックレスの代金払ってもらうから」





その言葉に、私は、ふっ、と顔が緩む。




ジェフも、「待ってるからな!」と小さく手を振った。





ゼロは、二人の店員の顔を交互に見ると
くるり、と後ろを振り返った。





ゼロは、さよならの言葉を言わなかった。




こうして、私たちは都市の町を出発したのだった。






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